備忘録#11 僕とSFの話

久々にホビージャパンを立ち読みしていたらHGメッサーが欲しくなってきたのでこの後買いに行こうと思います。グレイです。
今回は前回とほぼ同じテーマなのですが、SF、具体的に言うと先日読了したP.K.ディック作、「逆まわりの世界」について書いていこうと思います。毎度毎度書くのめんどくなってきましたがネタバレありです。

 

P.K.ディックとは?中の人は?年収は?調べてみました!

はい、調べてました。(wikiで)
大まかに書いていくと、フルネームはフィリップ・キンドレッド・ディックで有名な作品といえば「市に虎声あらん」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「高い城の男」「トータル・リコール」とかでしょうか。「アンドロイド~」(ブレードランナー)とか「トータル・リコール」は超有名な映画作品ですし、他にも映像化作品が結構あります。最近では日本でもスティーブン・キング並みにメジャーになってきたんじゃないでしょうか。作中でも結構出てきますが膨大な宗教知識や哲学観、くわえて神秘体験やトランスを中心にアイデンティティ・クライシスが持ち味の作家さんですね。実際本人も神秘体験というのを経験しているらしいです。(うさんくせぇ~)
近未来世界の描写の中でのオリジナルのガジェットなんかも出てきたりして、SF好きな人は間違いなくテンションが上がると思います。
 

逆まわりの世界とは?

今回読んだ「逆まわりの世界」という作品では、時間が逆流しています。作中で「ホバート位相」と名付けられているこの現象は、地球上のおよそすべてのものに適用され、死者は墓から蘇り、年齢は退行し、しまいには子宮に戻っていきます。ただし、ホバート位相が適用されるのはあくまで物質的なものだけ(この言い方がとても適切とは思えないが)であり、人々の行動や発言まではビデオのように逆再生されないみたいです(話がスムーズに進行しないからでしょうが。)食べ物は基本的に吐き出し、たばこは煙を吸って伸びていく、という不思議な光景のなか、劇中にソウガムという物質が出てきて嗜好品として皆経口摂取しているんですが、逆回りの世界で経口摂取してるってことは…あとはご想像にお任せします。
主人公はこうした墓から蘇る人間を掘り返して蘇生させるれっきとした会社、「ヘルメスの瓶商会」のオーナーであるセバスチャン・ヘルメスです。彼はある時、ユーディ教祖(すごい影響力のある人で、日本で言えば公安にマークされてる感じ)を発見して、復活させてしまってから図書館(多分「1984年」でいう真理省とかに近い)、マフィア、ユーディ教の三つ巴の争いに巻き込まれていくことになります。
 

エントロピーと時間逆流現象

読後の感想としては、なかなか楽しめたと思います。エアカーとかビドフォンとかガジェットもいろいろ出てきたしLSD爆弾で時間流をゆっくりにしたり(正直この辺は原理がいまいちわからなかった)SF作品としてのびっくり箱的な楽しさを持ちながらも、本質的なテーマは二人の女性の板挟みにもがく主人公の苦悩だったりするので、アイデンティティ・クライシスを描きながら、ハードボイルド系とうまく折衷している印象を受けました。
時間が逆流している世界といっても、すべてが逆流しているわけではないのがめちゃくちゃ混乱を生みますが、その辺はエントロピーで解説が試みられていました。確かにこんな小説書ける人間の脳みそは常にエントロピー増大してるでしょうよ。トマス・ピンチョンとかの作品でもちょくちょくエントロピーほか熱力学の話出てきますけど、ちゃんと理解できたためしがないです。
時間逆流現象におけるエントロピーはおそらく増大し続けているんだろうなあと思います。通常通りの世界では情報は増大し確定事項が増加していくだけですが、逆回りの世界では情報の増加と減少は同時多発的なのでそりゃ単純な情報量だけで見なければ混乱は増していくだろうなと…こんなうっすい解釈でいいんですかね?ディック研究家の方、熱力学詳しい方、お待ちしております。
で、もう一つ感想なのですが、もし今映像化されてもこの作品は受けないだろうなと思いました。はっきりいってもう少し図書館やマフィアとの戦いで広げてほしかったし、いまいちおさまりが悪かったですね。でもLSDのアクションシーンなんかをメインにしたらもっとウケるんじゃないかな。とにかくディックの描く死生観や哲学的な思想には一読の価値ありだと思うので、ぜひ読んでほしい一冊です。時間が空いたらディックのほかの映像作品や短編もチェックしてみようと思います。
今回はこの辺で。
 
次回へ続く…
 
参考出典
 
P.K.ディックwiki